続ツクダニオムリエ。

 先日書いたツクダニに進展がありました。

 夜に鳴った電話を取ると、それは「羽田のおばさん」でした。

 ってワタクシ、その羽田のおばさんと会ったことも話したこともないのでたちまちあわわわとなりいやごぶさたしてと言いかけて、だから会ったこともないっていってんじゃんと自分で自分に突っ込んで、いやあのですね挨拶もしなければいけないところを失礼致しましてあ申し遅れましたがぼくいくよさん(ツマの名前です)のダンナなんですけど結婚の報告もしてないってのにもうふたりめのコドモのつわりなんて失礼しますでもツクダニあわわわと言っていたら、羽田のおばさんは、あらそうと軽く貫禄を見せ、いやね、いくよちゃんがつわりでうちのノリのツクダニが食べたいって言っているからね、作ったのよ、明日送りますねふふふ。でもよかったじゃないのふたりめなんてねえ、と気さくに言ってくれたわけです。

 ワタクシもその気のおけないようなコトバの調子にすっかりほっとして人心地もついて、ツクダニ食べたけどおいしかったっす、で、おばさんが作ってたんですか、ぼくツクダニ屋で買ってきたんじゃないかなんてガセつかまされて羽田に買いに行かされるとこだったんですよわはわは。なんて言いません。でもほっとしたのは確かで、おばさんのおかあさんが羽田名産の海苔を使って醤油だけで作っていたトクイ料理で、私が今は作っているのよ、なんて話を教えてもらいました。

 でなんで羽田のおばさんがわざわざツクダニを作ってしかもわざわざワタクシどもの家に電話をしてくれたのか、と言えば、これすべてツマの執念のなせるワザで、実家の母親やら父親やらを動かして、つわりのムスメがツクダニツクダニと言っているんですが、とおばさんに連絡をさせたらしいのです。それで、おばさんはよしきたっと早速海苔を手に入れてぐつぐつ煮たわけです。

 ワタクシはツマと結婚するまでこれほどまでに細やかな親戚つきあいなんてしてなかったから、ちょっと感動して、おいいくよオマエ起きておばさんに挨拶しなさいと寝室をあけたら、ツマはどてっと大の字になって腹をぼりぼりかきながら安眠をむさぼっている。隣ではムスメが同じく大の字になっていて捕獲され麻酔が効いているドジな熊の親子のごとき様子でとてもじゃないが起きてくるような気配がない。仕方なく電話口に戻り、すみませんツマは今つわりがきつくて床に臥せっておりまして、と弁解すると、あくまで気持ちのいいおばさんは、あ、いいのよいいのよ気にしないでじゃ明日送るから楽しみにね、なんて言って電話を切るわけです。

 電話をおいて改めて寝室のふたりを見るワタクシ。前回、ワタクシは山岡さんと栗田さんはカッコよくない、と書きました。でもこの状況、明らかに美味しんぼの世界じゃないですか。ワタクシがばたばたとネットを調べたり頭下げたりなんかして、でもツマの鶴の一声で全部解決! みたいな流れ。で、悠々余裕シャクシャクの栗田さんと、ちぇっと頭をかくおっちょこちょいの山岡さん。だけどふたりは仲良し。

 いやな展開です。すごーく。やっぱりワタクシ魯山人に憧れてて、おざなりラブコメや山岡さんな生活は憧れてないです。

 シャクなんで報告かたがたツマの実家に電話して出てきた義妹にグチをこぼしておおいに溜飲を下げました。親戚付き合いもですが、一人っ子のワタクシにはこのきょうだい付き合いってのもとても新鮮で貴重なものに感じられます。

 でもって。ツクダニ。楽しみです。むふふ。おいしいんだからさ。