チョイ悪オムリエ。

 家人のふとした表情が誰かに似ている、ということがあると思います。

 ワタクシはワタクシのツマのふとした表情が「柳葉敏郎」に酷似していることに気づき、ツマの実家の方々によく発見したと大変感心されたのですが、それはおいておいて、ワタクシのムスメです。

 ワタクシのムスメのふとした表情は、実にしばしば、おやじと呼ばれる方々に似る。まず似ているのが、安部譲二。どこが、という具体的なディテールではなく、全体の極道上がりのやんちゃくれな感じがムスメの顔に宿る瞬間があるのです。その他にも大勢おりますが、中でも、しみじみ似ていると感じたのは、川谷拓三、西田敏行なぎら健壱の3名になります。

 川谷拓三は「どん兵衛」のCMに山城新伍と出ていた人で、くしゃくしゃっとした笑い顔がムスメの笑い顔と驚く程似ています。西田敏行は「池中玄太80キロ」の時の一生懸命って感じの顔に酷似しており、ワタクシどもがおもしろがって「とりよ〜とりよ〜」と杉田かおるの劇中歌を歌うと、玄太の顔で、両手をひらひらと上下にゆすって、鳥(多分丹頂鶴)になりきります。そして、おかしいと言って笑うワタクシどもを見るきょとんとした表情が、ピエール瀧とCMで共演しているなぎら健壱を彷佛とさせる。

 安部譲二はさておき、他の3名は、ワタクシも愛好する性格俳優であり、文筆家であり(なぎら健壱のエッセイはとても面白い)、それにムスメが似て嬉しく思うべきなのでしょうが、妙齢のムスメが拓三に似ているというのは、さすがにまずいかもしれないとも思います。

 しかし、町を歩いていると、ムスメくらいの年令の、つまり2才くらいまでの赤子やコドモの表情が、中年の男性に似ている時がとても多い。どうもムスメに限った話ではなく、赤子やコドモとおやじの顔には共通項があるようです。中でも、ちょっと愛嬌のあるおやじ。今回挙げた4名は、いかつい顔つきですが、ふとした表情、無防備な笑い顔が「男の子」みたいな、母性本能をくすぐるような無邪気さを持っているという点で、共通しています。安部譲二なんて、その表情で飯を喰っているんじゃないかと思わせるくらいです。

 ちまたのちょい悪なおやじたちもそろそろ飽きられ鼻についてきているとは思うのですが、多分、こういった王道の「母性本能をくすぐる」おやじは、不滅だと思います。いかつい顔してちょい悪なことはもちろん、わりと、いやけっこう悪なことをしても、その笑顔一発で(とりあえず女性には)許してもらえるようなおやじ、いるでしょう。その親玉が、譲二であり、拓三であり、敏行であり、健壱であるわけで、その証拠に彼らのとっておきの表情は、くすぐるどころか、母性本能そのものが出てくる赤子、つまりワタクシのムスメに似ているわけです。

 そんなことを発見しむふふと鼻の穴を膨らませるワタクシ。その脇をギバちゃんとどん兵衛が固める構図。冷静に考えて、両手に華な光景には見えません。